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電車通勤のお供にしばらく前に読んでいたのが金庸のデビュー作『書劍恩仇錄』。
後の金庸作品に較べると、決して評価の高い作品ではないのですが、個性的なキャラクターが登場し、なかなか楽しく読める作品です。

ただネックになるのは主人公。
この小説の主人公、陳家洛は文武両道に秀で、性格は穏やか且つ控え目、金庸作品主人公には少数派といえる貴公子然とした美男子。
と なると非の打ち所がないという感じなのでしょうが、ダメなんです、彼。
「知識人としての優柔不断さ」云々などと表現されたこともありますが、良く言えば理想家なんでしょうね、しかもかなり青臭い。

以下、ただの個人的な感想、しかもかなり長いです(汗)。

この作品で重要な役割を果たしているのは乾隆帝の漢人説。
乾隆帝といえば、清朝の絶頂期を作り出した皇帝ですが、彼には漢人だったとする伝説があるんですね。
この小説の中では乾隆帝は主人公である陳家洛の実の兄という設定になっています。
そして主人公の陳家洛は、清朝を滅ぼそうとする紅花会という組織のトップ。
この紅花会には水滸伝を思わせる個性的な面々が揃っています。
そしてヒロインには清朝に攻められるウィグル族の才色兼備の知将ホチントンとその妹にして絶世の美女カスリー。

この女性関係において陳家洛は全くダメなんです。
最初、彼はホチントンと知り合い、彼女に魅かれるのですが、彼女と親しげな男(実は男装した女の子)の存在に自分の気持ちを明らかにはできずにいました。
その後、偶然に彼女の妹、カスリーと出会い恋に落ちるんですね。
でもホチントンにも未練がある、と(笑)。
カスリーは天真爛漫で純粋無垢、一方のホチントンは陳家洛以上に頭の切れる女性。
その両方と静かに暮らしたい、なんて、ちょっと思ってみたりもするんですが、「天下国家のことを考えるべき時に、女性のことで思い悩むなんて…」と楊過あたりに「阿呆か」と言われそうなことを考えたりもします。
結局、ホチントンではなくカスリーを選ぶところまでは別に良いんですが、問題はこのあと。
カスリーはその美貌のため、乾隆帝に迫られるんですが、陳家洛を心底信じている彼女は勿論、彼を受け入れません。
このあたり、彼女がすごく健気なんですよね。
業を煮やした乾隆帝、彼女の思い人が陳家洛であることを知って、自分の手で清朝を滅ぼし、国を漢人の手に取り戻すことと引き換えに、彼女を説得するように彼に言うんですね。
こんなのも、楊過あたりには「阿呆か」で終わりなんですが、この陳家洛はあろうことか(笑)、カスリーを説得しちゃうんですよ。
彼女が犠牲になることで多くの命が救われる、乾隆帝は兄だ、とか何とか言っちゃって。
カスリーも陳家洛にそう言われると従うしかないですよね。
ところが乾隆帝には清朝を滅ぼそうなんてそんな気はないわけで、逆に自分の出生の秘密を知っている陳家洛を殺してしまおうと考えます。
それを知ったカスリーは自分の命と引き換えに、「皇帝を信じてはいけない」と彼に伝えるんですね。
彼女の死と乾隆帝の裏切りを知った陳家洛は涙に暮れますが、あんたが悪い!としか思えないんですよね。

金庸の主人公は郭靖(『射鵰英雄傳』)のように優柔不断で、時々イライラさせてくれるキャラクターもいるんですが、この陳家洛は自分が痛い目に遭うんじゃなく、ただ彼を愛して信じたカスリーと、やはり彼に魅かれたホチントンの姉妹両方を不幸にして、自分はひたすら後悔…って、それって何?と言いたくなるような。
一応、哀れだなぁとは思うんですけどね。

などと言うと、作品としても魅力がないと思われるかもしれませんが、陳家洛&中途半端な悪役という感じの乾隆帝を除けば、あとは皆さん、魅力的で楽しく読める作品になっています。
他のメンバーは、かなり濃いキャラクターなので、わかりやすいですし。

それにしても、やっぱり過兒とか令狐冲のように天下国家より恋人!っていう人が良いですね(笑)。
陳家洛にイライラした分、過兒の顔が見たくなりました(笑)。

ちなみに、金庸小説人物占いというのがありまして、生年月日と血液型から占うんですが、私はホチントンだそうで。
ホチントンは大好きなキャラなので、ちょっと嬉しいかも(笑)。
ちなみに、家人でやってみると小龍女になり、ちょっと複雑。
ホチントンの立場で考えると、余計に陳家洛への怒りが……(笑)。

金庸小説人物占い、興味をお持ちの方は以下からどうぞ。
 http://www.54niuniu.com/other/happy015.html
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●Thanks Comment
読んでみたいです。 
こんばんは。
↑のコメント、入力途中で間違って送信を押してしまいました・・・。
ごめんなさい

金庸の小説を知り合いに進められており、読んでみたいと思っているところだったのですよ!
お勧めはやはり、このデビュー作ですか?

P.S
金庸小説人物占いをやってみましたが、私は
「骆冰」でした!(*^-^)
ちろ 2007/01/27(Sat)01:38:41 EDIT
『書劍』は……
ちろさん、こんばんは!
上のコメント、気にしないでくださいね。
(このまま置いておいても良いでしょうか?)
パスワードを入力しておけば、後から書き込んだものを自分でも編集できますが、パスワードを入れる前に間違って送信しちゃうことって時々ありますよね(汗)。
「あっ」って思っても手遅れで…、ということが私も何度か……(笑)。

金庸作品、好き好きがあるでしょうが、おそらく金庸ファンの方で、初めて読まれる方に『書劍恩仇錄』を薦められる方はかなり少ないのではないかと(笑)。
これを最初に読んでいたら、他の作品には手を出さなかっただろう、と仰る方もいらっしゃるくらいです(笑)。
決して駄作ではないんですが、傑作でもなく……。
やはりデビュー作ね、という感じでしょうか。
キャラクターを生かしきれていないところがあって、残念だったりします。

私は彼の作品では『神鵰俠侶』と『笑傲江湖』がお気に入りですが(主人公が好みなので/ 笑)、『神鵰俠侶』も好き好きがかなり別れますね。
『笑傲江湖』は評価も高いですし、金庸らしいものの見方も描かれていると思います。
登場人物はかなりクセがありますが。
そういう意味では『神鵰俠侶』の前作に当たる『射鵰三部作』の1つ、『射鵰英雄傳』あたりが読みやすいのかもしれません。
でなければデビュー2作目の『碧血劍』も読みやすいですし、良いかもしれません。
これは主人公よりも、金蛇郎君という非常に魅力的なキャラクターが登場して、人気の作品です。
などと言っていますが、金庸の作品はわりと気軽に読めますので、基本的にどれを読まれてもあまり外れはないと思います。

金庸小説人物占い、ちろさんは駱冰でしたか。
彼女は『書劍』の紅花會のメンバーの1人で、美人かつ腕も立つ、気っぷも良いという素敵な女性です。
ちなみに『書劍』の中で私が最も好きかもしれない文泰来という腕の立つ紅花會四番役の奥さんで彼にぞっこん(笑)。
その上、余魚同という美青年にはずっと思いを寄せられるという、幸せな女性です。
私のホチントンは可哀想な女性なので、ちょっと羨しいですね(笑)。
小穂 2007/01/27(Sat)04:41:42

●Thanks Comment
素敵な女性なんですね。 
こんばんは♪

間違って送信してしまったコメントは、このままでもかまいません。
でももし、ジャマになるようでしたら、消して下さい。
お手数おかけしてしまって申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。<(_ _)>

>金庸作品
詳しく説明してくださって、ありがとうございます!
小穂さんのお勧めは、『神鵰俠侶』、『笑傲江湖』なんですね!
しかも、主人公が好みなんですか~、楽しみです♪
この2作品か、『射鵰英雄傳』辺りを読んでみようかなと思います。

>金庸小説人物占い
私の「駱冰」は、すごい素敵な女性なんですね
私はこんな素敵な女性ではないので、なんだか恥ずかしいです(笑)。
でも、良い結果だったというのは嬉しいです♪
ちろ 2007/01/27(Sat)22:52:44 EDIT
そうなんです
ちろさん、こんばんは!

コメント、全然邪魔ではないですが、削除した方がお気にならないでしょうか?
あとで一応、削除しておきますね。
と思ったのですが、折角いただいたコメントを削除するのは何だか嫌なので(笑)、非公開にしております。

>小穂さんのお勧めは、『神鵰俠侶』、『笑傲江湖』なんですね!
そうなんですよ。
どちらも金庸小説の主人公では少数派じゃないかと思う二枚目のヒーローです(笑)。
『神鵰俠侶』は基本的に恋愛小説ですね。
『笑傲江湖』は武侠ものらしい作品かなと思います。
金庸って、結構、恋愛至上主義(?)みたいなところがあって、主人公たちは女性のことで悩んだり、忙しかったりするんです。
そこも楽しめるポイントかもしれませんね。

>私の「駱冰」は、すごい素敵な女性なんですね
素敵ですよ、彼女は。
茶目っ気もありますし、明るくて、大輪の花みたいな人、というイメージを私は持っています。
『書劍』は女性陣に魅力的な人が多いんです。
私もホチントンみたいに頭が切れるといいなと思いますが、当然、彼女とは全然違います(溜息)。
でも素敵な人だと嬉しいですよね。
「誰だっけ、この人?」って思っちゃうような人だと、ちょっと寂しいですから。
小穂 2007/01/28(Sun)02:09:38
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